私たちが毎日、当たり前のように使っているトイレのドアの鍵。その多くは、「表示錠」と呼ばれるタイプの鍵が採用されています。これは、施錠・解錠の状態が、外部に「使用中(赤)」や「空室(青)」といった色の表示で示される機能を持つ錠前です。この表示機能により、中に人が入っているかどうかを一目で判断でき、プライバシーを守りつつ、円滑な共同生活や施設利用を可能にしています。では、この表示錠はどのような仕組みで動いているのでしょうか。その構造は、主に「室内側のツマミ(サムターン)」、「錠ケース」、「室外側の表示部分と非常開錠装置」の三つの部分から成り立っています。まず、室内側のツマミをひねると、その回転が錠ケース内部の機構に伝わります。錠ケースの中には、「ラッチボルト」と呼ばれる、ドアの側面から出入りする三角形の爪状の部品と、施錠時に飛び出す四角い「デッドボルト(本締錠)」が入っています。ツマミを回すことで、このデッドボルトがドア枠の受け金具(ストライク)にしっかりと収まり、ドアが開かないように固定されるのです。同時に、このツマミの回転と連動して、室外側の表示窓の色が変わる仕組みになっています。錠ケース内部の回転板が動き、赤や青の表示板を切り替えているのです。そして、表示錠のもう一つの非常に重要な機能が、室外側についている「非常開錠装置」です。これは、万が一、中で人が倒れたり、子供が誤って鍵をかけてしまったりといった緊急事態に備えて、外部から強制的に鍵を開けるための仕組みです。多くは、マイナスの溝が切ってあり、硬貨(コイン)やマイナスドライバーを差し込んで回すことで、デッドボルトを動かし、解錠することができます。このように、トイレの鍵は単にドアをロックするだけでなく、利用状況を外部に伝え、かつ緊急時には安全を確保するという、シンプルながらも考え抜かれた仕組みを持っているのです。
トイレの鍵の基本、表示錠の仕組みとは