終電後の深夜、あるいは早朝の誰もいない街で、家の鍵をなくしたことに気づく。そんな絶望的な状況において、一筋の光となるのが「24時間対応」を謳う鍵修理屋の存在です。彼らはなぜ、昼夜を問わず、私たちの緊急事態に駆けつけてくれるのでしょうか。その迅速なサービスの裏側には、利用者には見えない独自のビジネスモデルと、スタッフの努力があります。24時間対応を実現している鍵修理屋の多くは、特定の店舗を持たず、エリアごとに待機スタッフを配置する「出張専門」の形態をとっています。事務所を拠点としながら、各エリアを担当する作業員が、サービスカーと呼ばれる専用の車で常に巡回、あるいは自宅などで待機しています。コールセンターに入電があると、GPSシステムなどを利用して、依頼現場に最も近い場所にいる作業員に連絡が入り、現場へ急行するという仕組みです。これにより、店舗から出発するよりも移動時間を大幅に短縮し、「最短〇分で到着」というスピーディーな対応を可能にしているのです。サービスカーには、多種多様な鍵やシリンダー、特殊な工具が一通り搭載されており、現場でどのような状況に遭遇しても、その場で対応を完結できるようになっています。しかし、この利便性の高いサービスは、当然ながらコストがかかります。深夜や早朝に料金が高くなるのは、単に「夜だから」という理由だけではありません。まず、24時間体制を維持するためには、昼間のスタッフに加えて、夜間に稼働するスタッフの人件費が必要です。労働基準法に基づき、深夜労働には割増賃金が発生します。また、夜間の作業は、暗さや静けさの中で、より高い集中力と慎重さが求められ、精神的・肉体的な負担も大きくなります。こうした特殊な労働環境に対する手当も、料金に反映されているのです。さらに、緊急性が高い依頼がほとんどであるため、常に即応できる体制を維持するための待機コストもかかります。深夜料金は、こうしたサービスの裏側を支えるための、いわば必要経費と言えます。私たちは、その料金と引き換えに、時間や場所を選ばない「絶対的な安心」を手に入れているのです。
深夜でも駆けつける鍵修理屋24時間対応の裏側